ポルトガルにおけるマツ材線虫病の拡大と随陰樹策--マツ材線虫病防除戦略に関する国際セミナー(リスボン2008)報告--

摘要

強力な国際的監視体制をすりぬけ，マツ材線虫病が初めてヨーロッパ域内のポルトガルで確認されたのは1999年のことであった。この侵入は，ポルトガル統治下にあったマカオの中国復帰（1999年12月）に際しての，当地からの大量の物資の流入に伴うものと推測されている。ポルトガルとEUは直ちに強力な防除体制を組み，防除対象地域を明確に指定するとともに，その周辺約3kmの地域からマツを排除する予防的伐採を実施し，被害の拡大防止を図った。それでも抑えきれなかった被害拡大に対応し，2006年には指定区域の拡大がなされた（これらの事情について本誌55巻10号の記事を参照されたい）。ところが，多額の予算（約900万ユーロ）と労力をつぎ込hだ8年にわたる努力を横目に，それまでの被害地とはかけ離れた地域のフランスカイガンショウ（maritime pine，Pinus pinaster）の衰弱, 枯死木からマツノザイセンチュウが検出されることが最近の調査で明らかとなった。この深刻な事態に対処するため，EU当局は緊急にヨーロッパ各国と域外の材線虫病関係国（日本，韓国，中国，台湾，アメリカ，カナダ）に呼びかけて，2008年夏に標記の国際セミナーを開催した。