黒毛和種去勢牛の肥育において玄米の肥育中期以降の給与が 産肉性と肉質に及ぼす影響

摘要

黒毛和種去勢牛肥育において，肥育中期以降に玄米を給与した場合の影響を調べるために，肥育中期の黒毛和 種去勢牛10頭を供試し，対照区（5頭）には玄米を含まない配合飼料を，試験区（5頭）には対照区の飼料の圧片 トウモロコシの一部代替として10%の玄米を含む飼料を給与し比較した。その結果，発育値，飼料摂取量，推定 TDN摂取量，推定TDN要求率，枝肉格付成績，胸最長筋断面‘と筋間脂肪の色調（L*, a*, b*)，胸最長筋の一般 成分，脂肪上昇融点には両区間に差は見られなかった。一方，脂肪酸組成については，皮下脂肪，筋間脂肪，筋 肉内脂肪の脂肪酸組成においては両区間に有意差は認められなかったが，腎周囲脂肪については対照区に対して 試験区のパルミトレイン酸とリノール酸が高く（P<0.05)，多価不飽和脂肪酸が有意に高い割合で（PC0.05)， 飽和脂肪酸は低い傾向（P = 0.086)であった。また，胸最長筋中の遊離アミノ酸とペプチド含量はリジン，アル ギニン，苦味系が対照区に対して試験区で有意に（P<0.01)低い値を示し，メチオニンも低い傾向（P = 0.055)を示した。分析型パネルによるリブロースの官能評価では，食感については比較する牛肉により相反する結果と なったが，香り，風味，うま味，総合評価について差は見られなかった。以上の結果より，黒毛和種去勢牛肥育 において肥育中期以降の飼料に圧片トウモロコシの代替として破砕処理した玄米を10%給与しても産肉性に問題 ないことが示された。また，肉質への影響については，胸最長筋中のリジンや苦味系の遊離アミノ酸とペプチド の含量を低下させ，さらに，腎周囲脂肪の不飽和脂肪酸割合を高める可能性と牛肉の食感に対して影響を与える 可能性が示されたが，牛肉の味や香りへの影響はないことが示された。