兵庫県の稲作と米--伝統と新たな展開--

摘要

「兵庫県の稲作と米」というテーマを掲げると、さて、兵庫県外の方は兵庫県産のお米を試していただいたことがあるのかどうか、いささか心もとない．左党の方ならば、あの酒米「山田錦」の確固たる主産地が兵庫県であることは良くご存知かもしれない．また、安全安心なお米に関心の深い諸氏には「コウノトリの舞」ブランドでお馴染みかもしれない．しかしながら、県外に出ている兵庫県産米はきわめて少ないのが現状である．それは、神戸、阪神地方を始めとする大都市を抱えた県人口を支えるだけの生産量が賄えない現状だからである．しかしながら、本県の農業試験場においては古くから良食味品種の農林8号、いもち病抵抗性の農林6号、農林22号等を生み出し，コシヒカリ誕生にも多大な貢献をしてきた歴史がある．兵庫県は北は日本海に、南は瀬戸内海に面し，様々な気象条件に合った稲作が発達してきた．このシンポジウムではこれまで県内で営々と積み重ねられてきた酒米を含む稲作を概観し，これからの稲作が進むべき方向である高付加価値稲の栽培例や広域営農組合による水田農業システムの構築例などを検証し、今後の多様な水田稲作の発展に資することを目的とした．