多孔質ケイ酸カルシウム水和物のケイ酸資材としての評価

摘要

多孔質ケイ酸カルシウム水和物の水稲に対するケイ酸供給力を評価することを目的として，室内実験と水稲品種こころまちとサトホナミのポット栽培試験に7種類の市販ケイ酸カルシウム肥料との比較を行った．得られた結果は次の通りである．市販ケイカルの水溶性ケイ攣含量は0．1g kg~(-1)以下から1．2g kg~(-1)まで変異が大きく，その性質が多様であることを示していた．これに対して多孔質ケイ酸カルシウム水和物の水溶性ケイ酸含量は供試した2製品とも0．9g kg~(-1)前後と，市販ケイカルより高い値であった．湛水静置法を用いて，非アロフェソ質黒ボク土である川渡水田土壌の水溶性ケイ酸含量を測定した結果，土壌の水溶性含量は市販ケイカルの混合により無施用の場合の1．0～1．6倍に増加した．これに対して多孔質ケイ酸ヵルシウム水和物の混合は無施用区の2．3倍とさらに高い効果を示した．川渡水田土壌におけるポット試験の水稲9葉期茎葉ケィ酸濃度ほ，無施用区で41g kg~(-1)であった．市販ケイヵル施用区の茎葉ケイ酸濃度は無施用区の1．1～1.8倍，多孔質ケイ酸カルシウム水和物施用区では1．7～1．8倍であった．また，この時の土壌溶液ケイ酸濃度は市販ケィヵル施用区で無処理区の1．2～2．6倍，多孔質ケイ酸ヵルシウム水和物施用区で3．7～4．2倍であった．収穫期の水稲葉身ケイ酸濃度は無施用区で68g kg~(-1)であった．市販ケイカル施用区の葉身ケイ酸濃度は無施用区の0．94～1．16倍で，製品の間で大きな違いが認められた．これに対して多孔質ケイ酸カルシウム水和物施用区の葉身ケイ酸濃度は無処理区の1．28倍で，市販ケイカル区の値を上回った．沖積砂壌土である古川水田土壌のポット栽培試験では全体的に川渡水田土壌の場合より高い葉身ケイ酸濃度となった．数種の市販ケイカルでは2種類の土壌でその効果が異なったが，多孔質ケイ酸カルシウム水和物の効果はいずれの土壌でも安定して高かった．さらに生育期間を通した水稲ケイ酸吸収量についても，葉身ケイ酸濃度と同様の資材施用効果が見られた．以上の結果から，多孔質ケイ酸カルシウム水和物ほ市販ケイカル肥料と比べて優れたケイ酸供給力を持っており，水稲のケイ酸栄養の改善に有効な資材であることが明らかとなった．