二酸化炭素の濃度増加が水田土壌中のメタン動態に及ぼす影響に関する研究

摘要

人間活動の高度化に伴う二酸化炭素（CO_2），メタン（CH_4），亜酸化窒素（N_2O）ガスなどの大気中濃度増加によって，地球規模での温暖化が懸念されている．特に産業革命以来，地球規模での人口増加と人間活動の高度化の結果に伴う，化石燃料の燃焼，森林伐採，土地の不適当な利用などが拡大し，大気中のCO_2濃度が280ppmvから現在の360ppmvに増加した．さらに，本世紀の中期に，未だかつて人類が経験したことのない濃度560～700ppmvにまで増加していくと予想されている．また，アジアに広く分布している水田は，世界の全耕地面積の約10分の1を占めているのにかかわらず，世界人口の3分の1相当の食料を提供している．その役割は人口増加し続ける本世紀にさらに期待される．しかし，同時に水田はCO_2に次いで重要な温室効果ガスCH_4の主要な発生源である．CH_4はCO_2より21倍高い地球温暖化指数を持つため，農耕地からのCH_4放出は地球規模での温度上昇に大きな影響を与えると考えられる．本研究ではCO_2濃度増加が湛水水田土壌中のCH_4動態に及ばす影響について，無植栽の微小気象器，炭素同位体を用いた閉鎖系チャンノミーおよびFACE（free air CO_2 enrichment）実験など，3つの実験系を用いて検討を行った．