代かき、移植期に猪苗代湖に流入する 排水路に流出した水田土壌の性質

摘要

猪苗代湖は，淡水湖としては日本で3番目の103.3 km2 の広さに，日本で4番冃の量の5.4km3の水を湛ぇている. この水は飲料水源や農業用水として重要であり，郡山市と 会津若松市に飲料水を供給するとともに安積疎水を通じて 約9,000haの水田に農業用水を供給している.猪苗代湖の水質に関する最大の特徴は，猪苗代湖に注ぐ 一級河川である長瀬川に安達太良山の河口付近を水源と する硫黄〗11から大量の硫酸イオンを含む酸性水が流入する ことである.長瀬川の水には酸性水に溶けた鉄イオンや アルミニゥムイオンが多く含まれ，これらがリン酸イオン と結びついてリン酸イオンを不溶化し，猪苗代湖のリン 濃度が低濃度に保たれることにより植物プランクトンの 成長を抑制するという水質浄化能が働くと考えられてい る（藤田、屮村，2007 ；中村玄正，2008).このため，猪 苗代湖は，長期間にわたって日本最高クラスの水質を維 持し，2002年-2005年に4年連続して湖沼部門の水質日 本一に輝いている.しかし，安達太良山の火山活動の変 化により長瀬川に流入する硫酸イオンが減少したことな どにより，1996年頃から猪苗代湖の湖心におけるpH十. 昇が顕著になるとともに，猪苗代湖北部水域において湖水 の全リン濃度が上昇傾向を示すなど（福島県生活環境部， 1990-2010),水質悪化の兆候が見られるようになった. また，2002年頃から湖心における化学的酸素要求量（以 下，COD)の上昇傾向が認められるようになり，猪苗代湖 の水質悪化は顕在化してきた（福島県生活環境部，1990-2010).このような背景から，屮山ら（2008)は，猪 苗代湖の水質におよぼす農業部門の影響を検討するため， 2003年に猪苗代町八幡地区の水田地帯において，水田排 水の水質実態調査を実施した.その結果，5月16日から 5月31日までの16日間の懸濁物質（以下，SS)の流出 量が年間の48 %を占めることが明らかとなった（中111ら， 2008).また，そのSSの大部分が土壌粒子であり，排水 中のSSの増加にともなって全窒素，全リンの流出量も增 加する傾向が認められたこと(中山ら，2008)から，猪苗 代湖の水環境におよぼす水田から流出した土壌粒子の影響 が示唆された.