里海づくりにおける科学的知見の重要性

摘要

里山に対して里海という言葉が生まれた。しかし，そ こには大きな違いがいくつかある。山の多くは個人所有 であるが，海は共有空間である。しかしながら，海には 漁業権が設定され，漁村社会の慣習に従い，無主物とは 言え魚介類を捕る権利は漁業者のもののように思われる。また，海岸の多くはコンクリート護岸で固められて ドライブをしても海は見えないところが多いうえ，埋立 地は工場が建ち並び，海に近づけない。山には足で踏み 込めるが，海に出るには船が必要である。このようなこ とから，里海づくりを住民参加で行うためには，超えるべきハードルがいくつかある。このようなことから，現 在，住民参加の里海づくり活動は，沿岸の海全体からす ればごく一部の干潟と藻場に限られている。沖の環境と 生態系にコミットできないのであれば，今行われつつあ る住民参加の活動は，「里海づくり」ではなく， 「里浜づ くり」と言うべきであろう。