日本海の中深層底棲魚に捕食された ズワイガニ属幼生と稚ガ二の水深分布について

摘要

ズワイガニ属は深海性の産業種として，特にその資源 管理およびこれに関連した生活史の解明が重要である。ベニズワイガニ Chionoecetes japomcusとズワイガニ C. opilioでは，冬から春にかけてふ化したゾエア, メガロ パ幼生は水深0-250mで発育し，その後は稚ガ二に変 態, 着底して底棲生活に入るとされている。1—3)これま での生態調査は主としてトロールや桁網を用いて行わ れ，その結果，第6齢以降の個体群については深度分布の状況が明らかにされつつある。4'5)しかしながら， 採集時の網目サイズ以下である変態前後のサイズの個体 については，捕獲が困難なためにデ一タがほとhどな く ，発育初期の生態に関しては未知の部分が多く残され ている。これを補完する間接的データの一つとして，底 棲魚の消化管内容物の解析があるが，6)報告例は少な く,かつ種レベルで行った例はない。今回，日本海にお いて採集された中深層底棲魚の胃内容物中からズヮィガ ニ属の稚ガニ標本を分収する機会があり，形態による種 と齢の判別も含めた結果を今後の資源動態解析のための 基礎データとして供したい。