魚介類の寄生虫病に関する研究

摘要

日本の魚病研究は戦後の養殖業の発展とともに拡大し てきた。養殖環境下で発生する魚介類の疾病，特に大量 死を伴う魚類のゥィルス病や細菌病といつた感染症が主 たる研究対象となった。魚類感染症のうち，寄生虫病は 慢性的な転機を取ることが多く，ウィルス病や細菌病に 比較して魚病学的にはあまり注目されてこなかった。最 近は新しい病気の発生や対策の困難さから，寄生虫病へ の関心が高まつているようにみえる。寄生生物の特徴として，種類がきわめて多く，培養困 難で，生活環も多様なことが挙げられる。こうした特徴 から，寄生虫病にはウイルス病や細菌病とは異なる研究手法が求められる。ここでは，これまで約30年にわた り研究してきた養殖魚の寄生虫病を中心に，また，最近 になって手掛けている天然魚や貝類の寄生虫病も合わせ て紹介する。