野生動物の死体を活かす

摘要

一口に野生動物といっても，動物の種頬は豊富であるし，その関わり方にもさまざまな立場がある。世の中には，じつに多くの人々がそうした野生動物を相手に仕事なり趣味なり，あるいはボランティア活動を実践しているが，そのはとhどは生身の動物が直接の対象である。一方で野生動物の死体を出発点にして，主に死体を相手に仕事をしている著者のような立場の人間は特殊と言えるかも知れない。　最初に断っておくと，しばしば誤解されることなのだが，著者は別に死体だけに関心があるわけではない。研究分野としての専門は野鳥の死体の世界だが，著者は生きた鳥たちも大好きである。暇があれば調査とは別に趣味でもバードウォッチングに出かける。そこでも完全に趣味に徹し切れないところが悲しいのであるが，たとえ仕事の一部でも観察を続ければ続けるほど，野鳥たちはこの上なく愛らしくなる。鳥たちはサイエンスとしての見方をしても大変面白い生き物であるが，単純に眺めているだけでも楽しい。