脳波事象関連電位を用いた高体温時の認知機能評価

摘要

高温環境下で運動すると、パフォーマンスが低下することが指摘されている。その原因として末梢性 の筋疲労だけでなく、高体温による中枢性疲労に起因する筋力発揮の低下などが報告されているが、集 中力や判断力のような高次機能の低下も影響すると考えられる。実際に、熱中症の初期には、手足のし びれやめまい、立ちくらみだけでなく、ボーつとするといった症状がみられる。我々は、脳波事象開連 電位を用い、これまで聴覚および触覚刺激に対する認知処理系への高体温の影響を検討し、聴覚処理系や触覚処理系への影響はほとhどないが、P300の振幅に反映される認知処理系の脳活動に影響するこ とを明らカゝにした。また、高体温を維持したまま顔、頭部を冷却しても、P300成分の振幅は高体温時 と同様に減少したままであり、顔、頭部の冷却だけでは認知機能が回復しないことが示された。本研究 では、これまでの我々の先行研究を踏まえ、視覚課題を対象とし、これまでの認知課題よりも少し複雑 にしたフランカー課題を用いた。さらに、十分な全身冷却によって体温を暑熱負荷前に戻すことにより、 ヒト脳認知機能特性における体温の影響を検討した。