広島県極楽寺山におけるアカマツ葉枝上の酸性沈着物質

摘要

樹木衰退をもたらす二つの要因としての酸性沈着物質は，乾性沈着物と湿性沈着物とに大別されるが，排出源近くでは特に乾性沈着物の影響が懸念される．本研究では，瀬戸内海沿岸部に位置する極楽寺山の南向斜面の標高上50mと北向斜面550mの地点において，若木のアカマツの葉枝上に付着する酸性沈着物質を測定した．現地の若枝をそれぞれ3本ずつ選定し，一回毎に50mlの蒸留水を吹きかけ採取した．この実験を春季から秋季にかけて毎週19回にわたり行った．　 調査の結果，一回毎の20g当たりの平均当量値は，南向斜面150mでNO_3~-が3．22（±3．37）μeq/20g dry weight似下,同様りSO_4~(2-)が1.73（±0．94）となり，NO_3~-が特に高い乙とがわかった．また，北向斜面の550mの地点でNO_3~ーが0．51（±0．55），SO_4~(2ー)が0．54（±0.38）となり，南向斜面と比較して明らかな差異がみられた．特に，南向斜面と北向斜面との硝酸イオン量の相対的な比較では，南向斜面が6．3倍となり，これはNO_2濃度の3．9（＝20．6ppb／5．3ppb）倍と比較してもさらに高い．ガス状汚染物質および菓枝に付着する酸性沈着物質は，特に，硝酸も含めた窒素酸化物由来の物質が南向斜面において高ぐ，これが南向斜面のマツの衰退に多大な影響を及ぼしていることが推察される．