ラットにおける暑熱曝露温度と熱ショックタンパク質72発現の関係

摘要

ヒトにおける熱中症の発症には気温，湿度，気流および輻射熱の環境要因が大きく影響して おり，環境要因と体温調節反応の関係を検討した報告が多くみられる.一方，熱ストレスにより誘導される熱ショックタンパク質（Hsp72)は，暑熱曝露による熱中症発症のメカ-ズムを解明する上で 重要な指標であることが考えられている.また，ラットの心臓，肝臓および大腸において，暑熱曝露 に伴う直腸温の上昇量とHsp72発現増大に相関関係があると報告されている.さらに，直腸温に対す るそのHsp72の発現閾値および発現量は，各組織によって異なることが確認されている.このように， 内部体温の上昇量を規定してHsp72の変化を検討した研究はあるものの，暑熱曝露環境（外部環境） とHsp72の関連性を検討した研究は見当たらない.本研究では，ラットにおいて暑熱曝露温度と心臓， 視床下部，肝臓，腎臓および骨格筋におけるHSP72発現の関連性および各臓器別のHsp72発現の違い についてそれぞれ検討した.