無細胞抽出系を用いた培養細胞のリブログラミングとその応用

摘要

体細胞クローン動物の作出例は、これまで様々な動物種において報告されてきた。しかし、世界最初の体細胞クローン動物であるドリーの誕生以来、10年近くの年月が経過しているにもかかわらず、体細胞クローン動物の作出効率は未だ非常に低い。また、クローン胚およびクローン胎子の異常も数多く報告されている。体細胞クローン胚が正常に発生をすすめるためには、分化した体細胞核が一度未分化な状態に戻り、分化全能性を獲得しなければならない。 この過程は核の初期化（リブログラミング）と呼ばれている。 核のリブログラミングの過程を詳細に理解することは、クローン動物の作出効率向上のためにも非常に重要なことであるが、リブログラミングの機構はほとhど解明されていない。 本稿では、このリブログラミングという言葉をより広義にとらえ、核（細胞）の状態がもとの状態から変化して、別の細胞の性質を示すようになることをリブログラミングとよぶことにしたい。