胎子の発育不全が認められたウシ胎盤節における MRJ遺伝子発現解析の試み

摘要

mamrnalianrelativeofDnaJ（MRJ）は、タンパク質の構造形成の調節を介して、細胞機能調節に必須の因子として機能する分子シャペロンの1つに分類され、大腸菌におけるDnaJの類縁体である1－3）。 このDnaJについては、DnaKのパートナータンパク質として、細胞質内で合成されたミトコンドリアを構成するタンパク質の前駆体タンパク質をミトコンドリア内に移行する働きの他、種々のストレスにより細胞内の可溶性タンパク質の構造に乱れが生じて生成された変性中間体に結合して、これらの凝集を抑制する働きなどを担うことが知られている2，4）。 MRJは、妊娠過程との関連性がマウスで指摘されている。 マウスでは妊娠約8．5日に、尿膜と繊毛膜が融合するchorioallantoicfusionが惹起され、その後に胎盤迷路（1abyrinth）が形成されるが、MRJノックアウトマウスではこの過程が起こらず、胎子は死亡することが報告されている1）。 一方、ウシにおいては、妊娠16～135日の子宮内膜でのMRJ遺伝子発現パターンの解析により、妊娠初期（妊娠16～21日）にMRJ遺伝子発現が他のステージと比較して高く、マウスとは発現様相が異なっているが、妊娠過程に何らかの関与をしていることが示されている5）。 また、同様なMRJ遺伝子発現は、体内受精胚、体外受精胚および核移植胚といった生産手法が異なるウシ胚においても認められている6－8）。 以上のことから、MRJはウシ胚の発生や妊娠過程における関与が十分に想定される。 しかし、詳細については、現在のところ、明らかにされていない。 我々は今回、胎子の発育と胎盤でのMRJ遺伝子発現との関係を解析する目的で、胎子日齢が約60日に達した数頭の妊娠個体を用い、胎盤節のMRJ遺伝子発現に関する調査を試みた。