ブタ着床前期胚の体外培養---受精後12日目のブタ胚の体外培養方法確立の試み

摘要

本実験はブタ胚盤胞期胚以降の胚における最適培養条件の確立を試みた。妊娠12日目のミニチュアブタ（ゲッチンゲン、経産）4頭を安楽死させ、子宮液の塩、エネルギー基質およびアミノ酸の濃度を測定したところ、既存の培地に比べてNaが低く、KやMgの含有量が多かった。そこで、それを模した基礎培地を作製した。供試胚は、過排卵処理を施した妊娠12日目のミニチエアブタより外科的に回収した。さらに、培地の良否を検討するために胚の直径（長径＋短径×1／2）を指標とし、培養前、培養後72時間および培養後144時間に計測を行った。実験1として、培地に添加するタンパク質を検討した。MEMおよびBMEのアミノ酸を添加した基礎培地に5mg／mlBSA（FV）またはBSA（FAF）とFCSを組み合わせた計7試験区の培地を作製し、胚を培養したところ、1％FCSおよび5mg／ml BSA（FV）を添加した区が最も胚の直径を維持した。次に実験2として培地に添加するアミノ酸濃度の検討を行った。実験1で最も良好な結果を示した1％FCSおよび5mg/ml BSA（FV）を添加した培地に対して子宮液中に多く含有されていたグリシン、セリン、タウリンおよびグルタミン酸をそれぞれ5mMおよび10mMずつ添加した実験区を設定し、それぞれを比較した。5mMおよび10mM添加区は無添加区に比較して胚の直径を維持し、144時間後には5mM添加区で最も良好な結果を得た。次に、実験2で最も良好な結果が得られた培地にクエン酸を1および5mMずつ添加し、無添加区と比較したが、胚の発育を支持しなかった。本実験により、作製した培地に血清とBSA（FV）を混合し、さらにアミノ酸（タウリン、セリン、グリシンおよびグルタミン酸）を5mMずつ添加した区が、ブタ着床前胚の形状維持に有効であることが示唆された。