濃厚飼料給与量が経済性，環境負荷，家畜の健康状態および人間の満足感に及ぼす影響

摘要

これまでの酪農生産システムの評価は経営的収益性を用いた評価方法が主流であった．その結果，経済効率は確かに向上し，国全体では，牛乳，乳製品の自給率は72％と高い自給率を誇っている，しかしながら，餌である飼料の自給率をみると25％と非常に低く，残りの75％を海外に依存しているという現状がある．これは，安価な飼料を求めながら，経済効率を高めてきた結果の1つである．しかし，その一方で高エネルギー投下や環境問題等の問題を引き起こしている．昨年11月に罰則適用が開始された「家畜排せつ物法」はその1つの表れであるといえる．そこで，筆者らは，酪農生産システムを経済性だけではなく，エネルギーや環境負荷という視点，さらに，人間や動物（家畜）の立場をも考慮した社会学的視点をも含めた5指標による総合的評価指標を提起するとともに，実際にその指標を用いて各種の酪農生産システムを総合的に評価することを試みている．本報告ではそれら5つの指標と濃厚飼料の給与量の関係を明らかにすることを目的とした．