合鴨雛の水への順応性

摘要

合鴨雛における水への順応性とそれに関与する要因を明らかにするため，貯化後28日齢までの水浴行動を調べるとともに，加齢に伴う水浴能力および形態的特徴（羽毛および尾腺）の発達，水浴能力と羽毛洗浄処理あるいは羽毛密度との関係を検討した。 合鴨雛が1日に費やす自由水浴時間は1日齢で平均146分間と最も長かったが，日齢の経過に伴って減少し，10日齢以降は有意に短くなった（P＜0．05）。 自由水浴時間は13日齢で平均27分間と最短となり，その後，増加する傾向を示した。 水浴経験のない0～28日齢の合鴨雛を水温20°Cの恒温槽で強制水浴させた場合，水浴15分間後の体温は0日齢で平均40．2°Cと最も高かったが，加齢に伴って低下し，3～19日齢にかけて有意に低い値を示した（P＜0．05）。 体温は11日齢で29．4°Cと最低となったが，その後，22日齢まで上昇し，それ以降，ほぼ一定の値を示した。 強制水浴時間もまた水浴後の体温変化と同様のパターンを示した。 合鴨雛の腹部の正羽密度は0日齢で最も高かったが，日齢の経過に伴って2週齢まで顕著に低下し，その後，漸減した。 一方，綿羽は9日齢から採取出来る程度に成長したものの，その密度は正羽密度と同様に日齢の経過に伴って低下した。 合鴨雛の尾腺については，腺細胞が10日齢から発達し始め，21日齢以降に完成するものと推察された。 鰐化後11日齢までの合鴨雛の水浴能力の低下の要因を明らかにするため，羽毛洗浄した合鴨雛を強制水浴（水温20°C）させたところ，体温および水浴時間は鰐化後12日齢まで対照区（非洗浄区）に比べ洗浄区で有意に低い値を示した（P＜0．05）が，それ以降，有意差は認められなかった。 羽毛密度を低下させた合鴨雛の体温および水浴時間は加齢に伴って急激に低下したが，羽毛密度を一定にした区では大きな変化が認められなかった。 また，2～12日齢において前者に比べ後者の体温および水浴時間が有意に高い値を示した（P＜0．01）。 以上から，合鴨雛の水浴能力は1日齢で最も高く，加齢に伴い11日齢まで低下したものの，その後，綿羽と尾腺が発達し，水浴能力を再び獲得したものと推察された。