森田頭首工の堆砂対策

摘要

森田頭首工（写実－1）は，栃木県東部の芳賀台地に農業用水を供給するため，南那須町森田地内の那珂川水系荒川に設置された。 可動堰として，幅23．3mの洪水吐2門，幅10．6mの起伏ゲート付土砂吐1門を有し，付帯施設として，両岸に魚道，堰直上流右岸側に取水口が設けられている。 最大取水量は，潅漑期が1．763m~3／s，非潅漑期が0．240m~3／sである。 森田頭首工は，平成9年から11年にかけて建設されたが，この間の平成10年と11年の洪水によって，堰周辺および堰上流の河道湾曲部内岸側に大規模な堆砂が発生した。 この主な原因は，頭首工建設に伴う河道拡幅，および堰下流の河道蛇行部に起因する背水によって，堰周辺の掃流力が低下したことにある。一方，堰直上流の長期的な砂州の挙動に関しては，河道の蛇行波長に対して蛇行角が非常に大きいため，既存の知見によると，凸型下流の寄州は移動停止条件下にあると考えられる。しかしながら短期的には，洪水等の流量変動による砂州の変形によって寄州の先端部が取水口付近にまで達し，取水に影響を及ぼす場合があると推察された。したがって，森田頭首工の堆砂対策では，ある程度の堆砂を許容しつつ，主流の方向と流速を適切に定め，堆砂の位置と量を制御するのが現実的と考えられた。 本報では，移動床水理模型実験に基づき，水利工の布設を主とした森田頭首工の堆砂対策について報告する。