「開発のための農業」アジユングと日本の農業、農村経済学の課題

摘要

会長講演は，会員に対する研究課題提示を目的として， 岩本会長の時から始まったものである.しかし研究課題 提示は簡単なことではない.いろいろと考えた結果，こ こ数年間で刺激を受けた文献の中から，世界銀行（以下世銀と略）の『世界開発報告2008年』（World Development Report 2008： Agriculture ior Development, 以下WDR 2008と略）を選び，この文献を素材にして， 日本の農業、農村経済学の課題を考察することとした.世銀が年次報告書で農業を取り上げるのは，.1982年 以来ほぼ四半世紀ぶりであり，そのこと自体が注目に値 することであるが（大塚、櫻井〔7う），，同時に，内容が 際立って面白い.開発における農業の位置づけの新鮮さ， 取り扱つているテーマの包括性，分析方法の的確性，多 くの世界的学術的研究に裏打ちされた記述等々の特色は 特筆されるべきである.とくにタイトルにある「開発の ための農業」（Agriculture for Development ：以下AfD と略）というアジエングは魅力的であり，本稿でもとく に節を設けて議論しておきたい.