植物集団間の自然交雑と隔離に関する受粉生物学的考察〔12〕－2．集団間の隔離の方法と精度（その3）わが国の採種圃における集団間の自然交雑に関する実態調査の実例－

摘要

これまで紹介してきたとおり，自然交雑の可能性のある作物が植えられた複数の採種圃の間に，花粉媒介昆虫の移動や風の流れを妨げる何らかの障害物や隔離帯があれば，隔離距離を短縮できることは明らかである．しかし，実際の採種地帯における採種圃の酉己置との関係において集団間の自然交雑率を詳細に調査した例はきわめて少ない．そうしたなかで，藤井（1949a，b）は埼玉県の旧松伏領村と旧八代村において，ハクサイ，コマツナ，タイサイなど同一種（Brassica rapa）の野菜採種国が複雑に混在する地帯を対象として，実際の配置におけるハクサイと他集団との自然交雑率について詳細な調査を行っている（図6，図7ならびに表17）．