地域社会における小規模水道組合の持続要因に関する研究

摘要

日本国内の水道普及率は2010年時点で97.5%[1] と高水準を示している.この普及率に貢献したのが， 1950年代に都市部から離れた人口の少ない地域で 開始された簡易水道をはじめとする小規模水道開発 である.日本の農山村では，飲料水の供給は当然の 条件であるが，行政サービス水準の低い発展途上国 の農山村地域においては，依然として極めて重要な 生活関連施設である.飲料水の改善が求められてい る農山村地域は交通手段が確立されておらず，公的 機関による管理が及ばないことが多い.このような 地域では，巨額の公共投資を必要とする大規模な上 水道システムではなく，むしろ小規模な簡易水道施 設による供給が適当である.そのような施設の維持 管理については，行政に依存するのではなく，地域 住民自身による参加型の管理運営が求められてい る.また，発展途上国では公共セクタ一が担ってき た水道事業を民営に移行する動きが出ている.それ に伴い水道料金の価格が上がり，低い水圧や臭い， 断水が起こるなど，サービスの低下が問題点として 挙げられている[2].