これからの日本農業の展開と農業環境研究

摘要

かつて高度経済成長の始まった時代には，生産性の向上を図りつつ，国民所得の向上に伴って需要の拡大する作目への選択拡大によって，農家所得を向上させる農業基本法の政策がそれなりに功を奏した。 特に水利の便の悪い台地上の畑作地帯では，野菜，畜産，果樹などの選択的拡大によってこう．した農家の所得が向上した。 また，水稲ではある時期までは高米価政策によって稲作農家の所得が向上した。 しかし，今日ではもはや農産物全体の需要拡大や国内の農業生産全体の拡大は期待できない状況になっている。 1995年の年末に閣議決定された2005年を展望した「農産物の需要と生産の長期見通し」において，1992年に比して国内生産で10％以上の拡大が見通されているのは，17％の生乳，33％の牛肉，39％の牛用阻飼料生産だけで　 他の作目の国内生産では現状維持か減少が見通されている。 生産量を拡大できないだけでなく，農産物の輸入自由化の一層の促進によって農産物価格の引下げ傾向が続いている。 従って，農業稔生産額も減少し，所得向上の難しい部門から脱落する農業者も増加している。 日本農業はこうした壁に突き当たって久しい。