二〇一五年センサス(概数値)にみる農業構造変動の特徴と地域性

摘要

前回の二〇一〇年農業センサス結果は、販売農家数が大きく減少する中で経営耕地面積はごく僅かな減少にとどまり、借地による水田の流動化によって大規模経営体への農地集積が進む等、一見するとわが国の水田農業構造が急激に変動し始めたかのような印象を与えるものだつた。しかし、これら変化を詳細に分析してみると、二〇〇七年度から開始された「品目横断的経営安定対策」(翌年度から「水田畑作経営所得安定対策」に名称変更)によつて政策対象が一定規模以上の柽営体に限定されたことに対応するため、数多くの集落営農組織が全国各地に設立されたことがその大きな要因であつた。すなわち、あまりにも性急な組織化が図られたことによって、経営体としての内実を十分に備えていない集落営農組織(いわゆる「枝番管理組織」等)が東北、北関東、北九州等で数多く誕生し、これら組織が農業センサスの調査対象(組織経営体)となったことによって、地域での農業生産の実態はさほど変わつていないにもかかわらず、統計上では大きな構造変動を生み出す結果となつたのである。