浅屈腱炎を発症したサラブレツド種競走馬における 順調な競走復孀に関連する要因の椟討

摘要

サラブレツド種競走馬の浅屈腱炎発症後の順調な競走復帰に関連する要因を検討するために回顧的調査を実施した。本研究では浅屈腱炎を発症した後、5回以上の競馬に出走することが可能であった 場合を「順調な競走復帰」として定義した。浅屈腱炎を発症した馬の診療記録から、各症例の超音波 所見、性別、年齢、体重などの項目について、また、競走記録から競走復帰の項目について調査した。 各項目と順調な競走復帰との関連性を判断する統計学的手法として、口ジスティック解析を利用した。 調査の結果、浅屈腱炎を発症した後、順調に競走復帰した症例は346頭中49頭（14.2%)であった。 また、口ジスティック解析の結果、浅屈腱の近位から遠位にかけての長軸方向の損傷範囲が長い症例 ほど、順調な競走復帰が難しいことが明らかになった。性別、年齢および体重は順調な競走復帰と関 連しなかった。本研究で得られた成績は浅屈腱炎を発症した競走馬の予後を考える上で、臨床獣医師 にとつて有用な情報となるであろう。