重輓馬の分娩後初回発情の繁殖成績とその受胎率を低下させる要因についての検討

摘要

重輓馬において、分娩後初回発情の繁殖成績を調査検討し、その受胎率を低下させる要因について新しい知見を得た。 調査には、1991年より1994年までに分娩した4～20歳の延べ422頭の雌馬について行った。 4年間の分娩後初回発情の交配率は、全体で62．6％、受胎率は60．2％であつた。 分娩後初回発情の受胎率は、1991年（67．7％）が、1992年（44．1％）に比較して有意に高かった。 分娩後初回発情の受胎率と平均胎盤排出時間および冬期の平均気温との間に、有意な相関があつた。 分娩月別の繁殖成績では、2月（53．3％）および5月（48，2％）に分娩後初回発情の受胎率の低下が認められた。 分娩後初回発情の平均交配回数は、全体で平均2．3回であったが、5月には平均1．8回と減少していた。 分娩後初回発情における初回交配日は平均分娩後11．3日で、最終交配日は平均分娩後14．0日であった。 5月の分娩後初回発情の最終交配日は、平均12．5日と早まっており、これは種馬側の要因が推測された。 月別の平均胎盤排坦時間は、1月が219分と最も長く、夏に向け短縮する傾向が認められた。 分娩後初回発情において交配されなかった群の平均胎盤排出時間（197分）は、分娩後初回発情において交配された群（143分）、または分磯後初回発情において交配され受胎した群（135分）と比較して有意差を認めた。 分娩からの日数が少ないうちに交配された馬の受胎率は低かった。 これらの結果より、分娩後初回発情の受胎率を低下させる要因として、気温の低下などが関与する胎盤排出時間の延長、分娩後の早すぎる交配、種馬側の要因などが考えられた。分娩後、胎盤の排出をできる限り早くすることや、分娩後の初回発情における適期の交配は、その受胎率を上げる効果をもたらすことができる。