骨形成蛋白遺伝子治療による馬の副管骨骨折モデルの 治癒促進および骨原生遺伝子制御

摘要

本研究では、馬の第二および第四中足骨にそれぞれ骨切除術（こっせつじょじゅつ；離れた2線で 骨切りし、分離した骨を除去する方法）および骨切り術（こっきりじゅつ;一本の骨折線をつくる方法） を実施して骨折モデルを作成し、次いで術後2週目において2型および6型骨形成蛋白（BMP2およ びBMP6)の遺伝子を、アデノウイルスベクターを用いて骨切除部および骨切り部に注射'導入し、 骨折モデルの治癒促進および遺伝子の発現（遺伝子活性）を検討した。対照に、無治療もしくは標識 蛋白であるLacZの遺伝子ベクターのみを注射、導入した術部を作成した。BMP2およびBMP6遺伝 子が導入された骨治癒組織では、レントゲン検査によって、術後2週目から有意に多量の骨形成が確 認され、6週目のCT検査では、有意に高い骨容積および骨密度を示した。BMP2およびBMP6遺伝 子が導入された骨組織では、生体力学的検査にて有意に高い物理的強度の獲得の他、組織学的検査に よって治癒組織内および周辺部位での多量の骨組織形成、さらに、マイクロアレイ検査によって複数 の骨原生遺伝子の有意な活性亢進がそれぞれ認められた。遺伝子導入に使われたウィルスに対する血 清抗体価は上昇していた。しかしながら、ウィルス自体は注射箇所のみに限局じており、他の臓器か らは検出されなかった。以上の結果から、BMP2およびBMP6の遺伝子治療は、馬の骨折治癒を有意 に促進させ、馬の骨折症例に対する安全かつ有効な治療法として応用可能であることが示唆された。