縂論: 粘膜免疫系が持つ役割とその最新知見

摘要

外界との境界領域となる粘膜を持つ呼吸器，消化器， 生殖器あるいは泌乳器などの器官では，全身免疫系と は一線を画した粘膜免疫系が存在し，それが器官局所 における微生物感染の免疫応答に重要な役割を持つこ とが最近明らかにされている。それらの器官の粘膜免 疫系に共通した特性は，感染の場となる粘膜面において微生物に対して特異的なIgA抗体を分泌できるこ とや.抗原が感作された部位と異なる粘膜器官におい ても感染防除の効果を示す免疫応答を誘導できること などがある。この特性を活用し，最近ではヒトの医療 分野でウイルスや細菌の感染症予防に粘膜免疫誘導型 のワクチンを用いる取り組みがはじまつている。一方， 牛，豚および鶏においても粘膜での感染疾患は多く ， そのいずれにおいても畜産物の生産性の減少ひいては 農家の経営に大きな影響を与えている。今後，各家畜 で粘膜誘導型のヮクチンが飼養管理の現場で利用され る可能性もあると考えられる。