呼吸器疾患の画像診断2：胸部レン卜ゲンを撮る（前編）

摘要

「画像診断」という用語が用いられるようになったのは1970年代の後半からである。それ以前は「放射線診断」と 呼ばれていた。医療機器のめざましい進歩，特に高分解 CT,ヘリカルCTの普及により，きわめて明瞭な画像が簡 単に得られるようになった。しかし，農場での診断や経済 性が要求され，対象動物が大きい生産動物臨床では，CT 検査の普及にはまだまだ時間を要するであろう。一方，単 純X線診断については，撮像したその場で画像の読影がで きるデジタルレントゲン（DR ： Digital Radiography)の登 場により，生産動物臨床でも画像診断に対する考え方も変 わるかもしれない。さて，話を胸部単純X線診断に移した い。胸部X線検査は腹部のそれよりも条件がよい。それは， 肺胞内の空気といういわば天然の造影剤を利用した「造影 検査」ともいえるからである。前回説明したとおり，単純 X線診断は，4つの陰影濃度(金属，水，脂肪，空気）の違 い(組織間コントラスト）でつくられた画像によって行われ る。すなわち，カルシウム（骨）が最もX線をよく吸収（X線 の透過性が悪い）するので白っぽく見える。一方，空気はX 線の透過性が最もよいため.肺野は黒っぽく見える。よつ て，胸部X線診断は黒いバック（肺野）に水濃度の臓器が映 し出されるために，陰影の辺縁が腹部X線診断よりも明確 である。さて.胸部X線診断が呼吸器疾患の鑑別において 有用であることは誰もが疑わない事実であろう。ただ，問 題はどうやって撮影して読影するかである。胸部X線検査を行うに当たり，まずは撮影である。今回から3回にわたつ て，胸部レントゲン撮影について紹介する。