BSEの研究動向

摘要

英国でBSEの存在が確認されてから約20年，BSEが原因と考えられる変異クロイツフェルトヤコブ病（vCJD）の存在が報告されてから8年，日本でBSEの存在が確認されてから2年半が経過した。 2001年10月に開始された食用に供するすべての年の検査は現在も続いている。 本年4月からは24月齢以上の死亡午全頭を対象とする検査も開始された。 現在使用できる検査法は延髄を被検材料とすると畜後の診断法である。 生前診断法の開発が希求されているが，数年以内の実用化に直結するような成果は乏しいのが現状である。 わが国では，プリオン汚染硬膜移植による医原性クロイツフェルトヤコブ病（iCJD）が大きな薬害問題となり，現在，患者数は100名を超えた。 現在，プリオン病の有効な治療法はないが，期待がもてる成果が得られつつある。 一方，VCJDが輸血により伝播した可能性がきわめて高い事例が報告され，輸血や血液製剤の安全性の保証が，これまで以上に大きな問題となることが予想される。 本病の病原体であるプリオンが未知の要素を含hでいること，プリオン病は潜伏期が非常に長く，研究成果が出るまでに時間がかかることなど，研究遂行にはいくつもの障壁がある。 本稿では，生前検査法の可儲性を含めて，診断法開発に関する研究の現状，昨年末相次いで報告された，新しいタイプのBSEなどについて概説する。