牛の甲状腺機能亢進症

摘要

甲状腺機能亢進症は，甲状腺ホルモンの過剰分泌により 引き起こされる疾病で，人や猫で多く報告されている。甲 状腺機能亢進症に罹患すると，熱産生. 酸素消費量の増大， 基礎代謝率の上昇が原因となり，食欲増進，体重減少，神 経過敏，心拍数増加などの症状を示す。 今回，ホルスタイン育成牛でみられた甲状腺機能亢進症 について報告する。症例は体重171kg， BCS 2.75,13力月齢のホルスタイン 種未経産牛であつた。採食量は正常であるが発育が悪いた め，原因の検査を目的に2010年10月26日に本学に来院した (表一1)。 来院時の体温39.2t：，心拍数120回,/分，呼吸数36回/ 分で，活気.食欲は正常で鼻汁や発咳は認められず，第一 胃および腸管の運動も良好であつた。便性状は正常であつ たが，軽度の眼球陥没および可視粘膜充血が認められ，四 肢および胸部に振戦がみられた（表—2)。外貌上の特徴と しては，月齢に比較して著しく低体重であり，体高および 体長も短く，被毛が失沢していた。また，体長に比較して 頭長および鼻梁が長く ，喉頭部に軽度の腫脹がみられた (表—3，写真—1，2)。そのほか，一般臨床検査および外 貌において特徴的な所見は認められなかった。