下痢症状を示す新生子牛の代謝性アシドーシスおよび予後に対するD乳酸壇の影響

摘要

乳酸塩は，乳酸リンゲルなどの輸液剤に使われているなじみのある物質だが，D体とし体の異性体があり，その生理作用が異なるといわれている。 本論文は，D体の乳酸塩が子牛の代謝性アシドーシスにどのような関係を持つか調べた興味ある内容なので，抄訳し紹介する。 代謝性アシドーシスは，新生子牛の下痢の際に頻繁に起こり，激しい合併症を起こす可能性のある病態である。 一般に，下痢子牛のアシドーシスの病因学的メカニズムは，腸における重炭酸塩の喪失と有機酸の蓄積である。 脱水の場合に，腎臓の循環の減少と水素イオンの排泄の減少によって病態が悪化する。 組織血液循環減少後の嫌気性解糖によるL乳酸塩の形成は，新生子牛の下痢における高アニオンギャップアシドーシスの原因であると，これまで考えられていた。 Grove－White（1996）はこのことを証明できなかったが，下痢子牛のアシドーシスには，主として外因性の酸形成が関与すると示唆した。