ベクター研究の最前線

摘要

アルボウイルスとは，脊椎動物宿主と節足動物の両方の 体内で増殖し，かつ節足動物によって媒介されるウィルス の総称である。したがって，アルボウイルスの感染環の成立 には，脊椎動物宿主から吸血する媒介節足動物（ベクター）の存在が欠かせない。アルボウイルスは500種類以上が知 られている力、ウィルスに感染した脊椎動物宿主は，ほと hどの場合症状を示さないため，その伝播は様々な場所で， 我々が気付かないうちに起こっていると考えられている。 始末の悪いことに媒介節足動物のなかには，後述のヌ力力 のようにほとhど目につかないほど小さいものもいる。吸血性の節足動物の代表格は，蚊とダニであろう。特に， 蚊は日本脳炎ウィルスやデングウィルス，マラリァ原虫や フィラリアなど，様々なヒトの病原体を媒介するため，今 まで多くの研究がなされてきた。家畜のアルボウイルスの 媒介節足動物も"蚊"と認識されている場合も多い。しか し，反芻動物に異常産を起こすアカバネウィルス，ァイノ ウィルス，チュウザンウィルス，あるいはイバラキウィル ス，ブルータングウィルスは，蚊ではなく "ヌカ力"とい うあまり馴染みのない昆虫によって媒介される。