日本における牛のコクシジウム症

摘要

牛のコクシジウムは，牛下痢症の最も重要な原因の一つとして知られ，世界各地に広く分布し，その経済自勺損失も非常に大きい。 我が国においても，家畜衛生週報（農林水産省衛生課編集）に収載されているものだけでも毎年数十例の牛のコクシジウム症の発生が報じられ，伝染性疾患による牛の下痢症の中でも上位に位置し，症例に関する報告も多い。牛のコクシジウム症の防除対策を考えるためには，まずその疫学を理解しておくことが必要である。 牛のコクシジウムの分布および感染の動態に関する報告は諸外国では多数みられるが，我が国においては牛のコクシジウムの疫学的調査に関する報告は少ない。本稿では，著者らが実施した我が国における牛のコクシジウム分布調査および若齢年における感染の消長調査の成績を中心に，我が国における牛のコクシジウムの分布とその感染の動態について述べる。