生産性向上を目的にした乳牛の臨床免疫について

摘要

これまで乳牛の生産性向上のために産乳量の増加を目的とした遺伝的改良が積極的に実施されてきた。 その結果，一泌乳期当たりの乳量の増加，初産月齢の早期化などが促され，乳牛の乳生産能力は飛躍的に上昇した。 しかし，乳牛の健康を維持して高泌乳を確保するためには，一定の良質な粗飼料を給与し安定した第一胃発酵を促さなければならない。 四季が明瞭で多様な飼育環境にある本国の酪農現場では，高い産乳能力をもつ乳牛の健康を維持し，それらを効率よく飼育するために十分な環境が確保されているとは限らない。 現状としては高い泌乳能力を持った乳牛の産乳の確保に必要な安定した品質の飼料を自家生産することができないために，飼料供給を海外からの輸入に依存している。 わずかな飼料管理のミスにより疾病を発症するリスクの高い乳牛の増加と高品質な乳生産の要求は，午群の低産次化を進めることとなった。 現代の酪農業では家畜の糞尿による環境汚染の問題や食の安全の確保が大きく取り上げられるようになり，遺伝的改良の成果が正の遺産，負の遺産の両方をもたらした可能性がある。 そのため現代の乳牛が本来持つ生産能力を見直し，廃用牛を減少させて無駄のない生産を再考する必要がある。