フィールドで利用できる馬の全静脈麻酔（TIVA）

摘要

馬の外科処置や診断検査では，安全かつ確実に成果をあげるために全身麻酔の必要性が高くなる場合が多い。馬の全身麻酔法としては，静脈麻酔法と吸入麻酔法が実施されている。 吸入麻酔では吸入麻酔器や酸素ボンベといった特殊な器材が必要であり，馬の場合には1回換気量8～15L（約15mL／kg）をカバーできる再呼吸バッグやベローズを搭載した大動物用吸入麻酔器が必要となる。 現在のところ，国内で馬の吸入麻酔を実施できる診療施設は限定されている。 一方，静脈麻酔法は特殊な器材を必要とせず，注射麻酔薬のポーラス投与や持続静脈内投与（全静脈麻酔，Total Intravenous Anesthesia，TIVA）によって屋外でも馬を全身麻酔することができる。 本稿では，馬の全身麻酔に関する基本的事項とTIVAに使用される薬物とTIVAのプロトコールについて記載するとともに，本学附属動物病院麻酔科で試行している馬のTIVAを紹介する。