乳房注入用抗生物質製剤 使用後乳汁からの検査結果とその活用

摘要

全身症状の悪化，水様性乳汁を呈し，大腸菌性乳房炎を疑う症例の乳房注入用抗生物質製剤使用後 の乳汁を用いて，大腸菌群の簡易同定および薬剤感受性検査を試みた。乳汁細菌検査用培地で菌が検出されなかったのは4%のみで，88%から大腸菌およびクレブシエラが検出された。この結果は，培 養同定一般細菌キット「アビ20」による同定結果とほぼ一致した。乳汁直接塗抹による薬剤感受性検 査結果は，分離した菌での検査結果と全例で一致した。キノ 口ン系抗菌薬に対する耐性は認められな かった。また，感受性の認められる抗生物質を，全身投与および乳房内投与を行い，48時間経過した 乳汁中からも102 CFU/mL以上の菌量が検出され，検査も可能であった。これらの結果を治療に活用 することにより，急性大腸菌性乳房炎における死廃率は減少した。