ルーメン細菌に見られたへセルロースの新しい分解機構才リゴ糖異性化酵素と加リン酸分解酵素による糖代謝

摘要

ゥシなどの反芻動物の第一胃（ルーメン，瘤胃）は， 細菌や原生動物（繊毛虫）などの嫌気性微生物による飼 料植物の分解、発酵の場である.これらの共生微生物は植物の繊維物質を分解する多様な酵素を生産する.Ru-minococcus albusは，ルーメン細菌の一種であり，本 菌株のセルラ一ゼゃキシラナーゼなどの植物多糖分解酵 素は古くから研究対象とされてきた.TylerとLeather-wood 力 《1967 年に 本菌 株の 培養液 中に 見いだ した セロビ オース-2-ェピメラ一ゼ（CE)は，セロビオース（Glc タl—4Glc)の還元末端側のグルコース残基をマンノー ス残基に異性化して4-ひかグルコシルマンノース（Glc パl—4Man)を生成する反応は平衡でセロビオース 側に偏っており，セロビオースの約30%が4-ひタ-グルコ シルマンノースに変換される.セロビオース以外にラク トース（Galy^l—4Glc)やfi-1,4-マンノビオース（Man パl—4Man)といったル1,4-結合からなるオリゴ糖にも 作用する.このようなオリゴ糖のェピメリ化を触媒する C酵素はほかに例がなく， CEは糖質に作用する酵素のな かでとりわけユニークな酵素である.2007年に明らか にされたお.albusのCEの配列(2)を基に相同性検索を 行うと，CEホモログは嫌気性細菌だけでなく好気性細 菌にも広く存在することが判明した(3). CEはルーメン という特殊な環境に生育する細菌に見いだされた酵素で あるが，広く分布する糖質の代謝経路で機能する可能性 がある.