野生動物の王者、ヒグマ考（2）

摘要

地球上の総ての動物種が対象である我々獣医師にとっては、産業動物（家畜）、小動物（家庭動物）などに加えて、近年、野生動物の保護も注目されて来た。 特に、最近は自然や環境の保全に大きな関心が高まっており、その役割も多様化されつつある。 北海道獣医師会（北獣）では、今から15年前の平成8年（1996）に「野生動物部会」を設置して、天然記念物に指定されているオオワシ．オジロワシを鉛中毒から救うための、鉛弾の使用禁止を提言したり、飼い主や持主が特定されない「無主物」とされている野生動物の保護活動を主体とした、「野生傷病鳥獣保護事業」を、道からの委託事業として、平成9年（1997）から実施し、過去12年間に亘って大きな成果を上げつつある。 この数年間は、約100の動物病院が指定病院として活動をし、年間当り約1，000頭羽の野生鳥獣の治療や保護活動が行われている。野生動物は「無主物」として厄介な取扱をされがちではあるが、実際には、自然界の生態系のバランスを保つ重要な役割をしており、自然環境のバロメーターとしてあるいは観光資源として北海道にとっての重要な財産である。 特に、今年は、「北海道、洞爺湖サミット」が開催され、環境問題が取り上げられるとのことで、北海道の野生動物について人との共存などを含めて、生態系を守ることの大切さを世界にアッピールする良いチャンスでもあろう。