再論、アグリビジネスと遺伝子組換え作物-書評への回答にかえて-

摘要

遺伝子租換え（以下，GM）作物（註1）をめぐる問題を社会科学の立場から本格的に論じた研究書は，わが国では必ずしも多くない、その数少ない研究について，立川［90］は自らのアプローチをフードシステム論、流通論をカバーするものとし，これに対して，大塚［66］［67］を科学論，拙著『アグリビジネスと遺伝子組換え作物』［3幻をアグリビジネス論からのアブローデであると整理している．この他平川［36］［37］がリスク、ガバナンス論の観点から議論を展開している．また，GM作物をめぐっては主に食品安全性とそのためのシステム構築（表示やトレーサビリティ制度など）が関心を集めており，その限りでは数多くの研究論文が書かれている．もっとも，これらの研究はお互いに重なり合っており，「○○論」や「××アプローチ」として各論老を峻別することはそれほど重要ではない．実際，筆者はこれまで，敢えて「政治経済学アブローチ」を副題に据えた拙著をはじめ，当該問題を学際的、複眼的に捉えることの必要性を常に主張してきた，本稿では，拙著に対する書評への回答という形態をとりながら，GM作物を含む農業バイオテクノロジーの研究開発、商品化、規制のプロセスに関する社会科学研究上の諸課蓮について論じるとともに，学際的、複眼的アプローチの重要性をあらためて確認したいと思う．