I. 牛乳タンパク質の機能: ウシalpha－ラクーアルブミンの胃粘膜保護作用とその作用機序

摘要

はじめに - 1999年に発表された統計によると，日本人の4人に1人は過去3ヶ月間に何らかの上部消化管症状を経験している。 また，上腹部愁訴で来院した患者の内視鏡所見を調べた統計によると，最も多い疾患は非潰瘍性ディスペプシアで約半数を占め，次に胃.十二指腸潰瘍，胃炎のとなっている。 非潰瘍性ディスペプシアとは内視鏡検査で異常が認められないものの，慢性的な心窟部不快感，心窟部痛を示す疾患で，心理的ストレスや疲労，ぜなどの全身的ストレス，あるいは薬物の服用などにより発症するとされている。 胃.十二指腸潰瘍はHelicobacter pylori感染が主因であり除菌療法が治療の第一選択肢となっているが，耐性菌の出現や逆流性食道炎といった副作用の問題が指摘されている。 急性胃炎の成因としてはストレスや薬物，アルコールなどが知られている。 このように胃は様々な刺激に対して感受性が高く，また，現代はストレス社会であるため胃の疾患は我々にとって身近な問題といえる。