シンポジウム「バイオファクターとしてのD-アミノ酸」: 無脊椎動物における遊離D-アミノ酸の分布，代謝および生理機能

摘要

水生無脊椎動物は6億年以上もの間に多様な進化をとげ，淡水から深海底に至るあらゆる水圏環境に適応放散している．近年，これら水生無脊椎動物組話こ遊離のD-アミノ酸，特にD-アラニン（Ala）が多量に存在することが明らかにされ，環境適応との関連でそ。 の生理機能に興味がもたれている．エビ、かニ類では筋肉中に3～17 mu mol／g wet wtのD-Alaを含有し，全Alaに対するD-Alaの割合は30～50％に達する．一方，異歯亜網に属する二枚貝（ハマダリ，ホッキガイ，ミルガイなど）では10～50 mu mol／gwetwtとさらに含量は高く，D-Alaの割合が80％以上に及ぶものもある．不思議なことに巽形要綱忙属するマガキ，ホタテガイ，アカガイなとには痕跡程度しか認められず．進化との関連に興味がもだれる．D－Alaは他にも環形動物（ゴカイ，イソメなと）や種皮動物のウニ生殖腺にも多量に見いだされる．