ビタミンB12誘導体を利用して腫瘍の位置を特定する

摘要

1929年，William B．Castleにより内因子（intrinsicfactor）（IF）が発見されて以来，ビタミンB12（コバラミン）（Cbl）の腸管吸収および血液から組織への取り込みの機構に関する研究の多くは，IFおよびトランスコバラミン（transcobalamin）（TC），別名トランスコバラミンⅡ，とそれらの受容体を介した機構に焦点を当てたものであった．　腫瘍細胞のように増殖の速い細胞においては，ビタミンを始めとする各種栄養素の要求量が多い，従って，ビタミンに標識物質を結合させた誘導体を作り，それが腫瘍細胞によるビタミン取り込みルートに乗って，分解することなく取り込まれれば，腫瘍の位置の特定に使用できるし，さらに標識物質の代りに抗腫瘍物質を結合したビタミンの誘導体を作れば治療目的にも利用可能と思われる．標識物質や抗腫瘍物質を結合させるビタミンとして，他のどタミンではなくCblを利用することのメリットは，①cblは生命を維持するために必須な物質なので，細胞の突然変異によって取り込まれなくなる事態は考えられないこと，（参Cblは生体内でメチルコバラミンの形でメチオニン、シンターゼの補酵素として，また，5’－デオキシアデノシルコバラミンの形でメチルマロニルCoAムターゼの補酵素として働くので，細胞の増殖のためにメチオニンやチミジンを必要とする腫瘍組織に大量に取り込まれること，さらに③cblは大量に摂取しても毒性を示さないことである．