強い個性を見所へと昇華させる縮小の技

摘要

「入手した当初の姿は、今と植え付けはまったく違ったものでした。立ち上がりが真つ直ぐで樹高も今の倍とは言わないまでも、かなりの寸法がありましたね」と、素材を前に以前の姿を説明する田中氏。その田中氏の目の前に置かれた樹は、真柏などシャリ芸を見所とする樹種を彷彿とさせる、激しい幹の捻転が印象的な五葉松でした。素材を入手した段階では明確な樹形構想は描けていなかったとのこと。しかし「これだけの個性を持つ素材はそう多くはないですから」と、強い個性に惹かれて入手を決断。単調な立ち上がりを解消するために植え付け角度を右に大きく傾け、さらに盆栽としての大きさや輪郭を考えた場合に明らかに不要と思われる幹の上部を切断し、以後改作に耐えられるだけの樹勢を付けるベく培養に努めてきたと言います。この強烈な個性をどう活かすのか。田中氏がこの難素材を盆栽へと導く過程をご覧下さい。