わが岡山のマスカット〔第24回〕-風土、人、技術－【岡山県農業試験場での研究（2）】

摘要

岡山県立農業試験場が昭和43年6月に赤磐郡山陽町神田沖に移転したのに伴って，岡山市土田にあった果樹分場もこの本場の園芸部に合流した。 折しも，日本のブドウ栽培はこの時代に急速な発展を遂げつつあった。 1965年（昭和40年）にはブドウの結果樹面積は約18，000haであったのが，1970年には22，000haになり，1980年には約28，000haにまで増加した。 政府の農業基本法の改定によって果樹振興策が打ち出された影響であるが，デラウエアの無核化、肥大促進に代表されるケミカル、コントロール（薬剤による発育調節）の進展と，農用ビニールの利用による施設化の普及が進められたことが，その大きな原動力になっていた。しかし，岡山の温室ブドウ栽培は，明治の中期にマスカットが試作されたときから施設栽培であり，加温技術についてもすでに長年の蓄積があった。 また，ジベレリンの効果についても，昭和30年代に果樹分場でその効果を確かめる試験を完了していた。 したがって，山陽町に移ってからは，むしろ，土壌や水，新梢管理や結実管理など，主として品質向上と安定生産に向けての基本的な研究が極めて活発に行われた。 その結果，それまでの経験や思い込みによる誤りや，不明確なことが次々に正され，科学的な調査に基づく指標が示されていった。