環境汚染物質の内分泌毒性－内分泌撹乱化学物質の生殖撹乱作用－

摘要

内分泌撹乱化学物質（環境ホルモン）とは，環境中に放出された化学物質が体内に入り，体内のホルモンの生産、分泌を乱したり，ホルモン受容体に結合してホルモン類作用を示したり，あるいはホルモンの作用を阻害したり，生殖、発生、成長影響を及ぼす化学物質のことである。 世界自然保護基金が作製したリストには67種類が載っている。 この中には，カドミウム，水銀，鉛といった生殖影響を及ぼす金属から，ダイオキシンのように発癌物質として認定され物質の胎仔期に投与すると生殖影響や奇形を誘起する他に，スチレンのようにドーパミンを抑制した結果としてプロラクチン分泌を促進するものもある。 また，アンドロゲン受容体に結合してアンドロゲン作用を抑制し，抗アンドロゲン作用を及ぼすピンクロゾリンやp，p’－DDE，さらに，有機スズのように海産巻貝のメスにべニス様の構造を形成させる作用を持つ物質も知られている。 しかし，内分泌撹乱化学物質の大半はエストロゲン作用を持っているため，環境エストロゲンということも多い。 哺乳動物では，周生期に内分泌撹乱物質の暴露をうけると成体になってから，生殖影響として顕在化するのではないかとの仮説から，実験動物を用いた研究も始まっている。化学物質のエストロゲン作用は，培養細胞の細胞増殖系や卵巣摘出動物の子宮重量増加等を指標として調べられているが，問題となる胎仔期や新生仔期を対照にした研究ではない。