鹿児島県近海に漂流するアカモクの枝内部に形成される雄性生殖器巣

摘要

褐藻ホンダワラ属アカモクSargassum horneri （Turner）C．Agardhは，北海道から九州に至る日本沿岸に広く分布しており（吉田1998），鹿児島県本土沿岸の各地でも，その生育が確認されている（新村1990）。 そのため多くの研究がなされ，雌雄同株の生殖器床や（奥田1987），春だけでなく秋に成熟する群落も観察されている（Yoshida et al．1998）。 本種は日本沿岸で春から初夏にかけて出現する流れ藻の主な構成種であり，（吉田1963），九州北岸では3月から7月に最も多く出現することが知られている（小西2000）。 本来，ホンダワラ属の生殖器官は，葉腋から分岐した生殖器床に形成される。 しかしこのような通常の生殖器床に加えて，枝の一部がネマテシウム状に隆起した特異な生殖器官をあわせ持つ藻体が流れ藻として採集されたので，その形態学的な特徴について報告する。