イネのいもち病圃場抵抗性に関する分子育種学的な研究

摘要

いもち病はイネの深刻な病害であり、その 抵抗性の付与はイネ育種の重要な目標であ る。イネのいもち病抵抗性は真性抵抗性と圃 場抵抗性とに分けられる。真性抵抗性は主動 遺伝子に支配され絶大な効果を示すが、いも ち病菌レースの変化によって効果を失う。実際に1960年代に異なる真性抵抗性遺伝子を 導入して育成された品種が普及後わずか数年 間で罹病化した。一方、圃場抵抗性は、複数 の遺伝子座が関与する多様なレースに効果を 示す量的な抵抗性であり、持続的な抵抗性の 付与が期待される。日本陸稲は圃場抵抗性の 遺伝子給源として注目されたが、陸稲が持つ 劣悪な品質や食味を抵抗性と切り離して導入 する技術がなかつたことから、環境の影響を 受けやすく選抜が難しい圃場抵抗性の育種利 用は進まなかった。