ニワトリの視床下部における摂食制御関連ペプチドの局在

摘要

1950年代に行われた実験により哺乳類における摂食行動の制御には視床下部の神経核が深く関わっていることが示された。 視床下部腹内側核（nucleus ventromedialis hypothalami：VMH）を両側性に破壊された動物は、摂食克進から重度の肥満に至る。逆にVMHの刺激は、摂食の抑制を引き起こす。 一方、視床下部外側野（nucleuslateralis hypothalami：LH）の損傷は、動物を栄養失調から餓死に至らしめ、LHの刺激は摂食の克進を引き起こす。 これらの研究結果より、Ⅴ肥及びLHにそれぞれ満腹中枢及び摂食中枢が存在すると考えられるようになった1）。 また、室傍核（nucleus paraventricularis hypothalami：PVN）、弓状核（nucleus arcuatus：ARC）或いは背内側核（nucleus dorsomedialis hypothalami：DMN）などの神経核も肥満ややせに関係する部位であることが示されている。 哺乳類のARCは、第三脳室の腹側域を占めており、正中隆起（eminentiamediana：ME）や下垂体の近くに位置することやARCニューロンの投射域が広いことから、感情や知覚並びに様々な自律機能の統合に関与していると考えられている2）。 その破壊により肥満を引き起こすことや体脂肪蓄積に関わるなど、RCは摂食制御にも重要な神経核であることが示されている3，4）。 鳥類では同様の領域に、視床下部下核（nucleusinferiorishypothalami：IH）と漏斗核（nucleusinfundibuli：IN）のふたっの神経核が存在し、哺乳類のARCに相当する神経核とされている（図1参照）。