昆虫の社会行動の分子基盤

摘要

ミツバチやアリ，シロアリなどを代表とする社会性昆虫はさまざまな側面で特異な点をもっている。 通常の生物は繁殖を行って適応度を上げることがいわば常識的であるが，自らは繁殖を行わずに利他的に振る舞う“自己犠牲”的な個体が出現する点がまずその第1点目である。 さらに，予測不能な状況の変化にも順応できる表現型可塑性。 表現型多型という性質を利用することで，カーストという多型個体を産み出している点が第2点冒である。 カーストは，繁殖分業や社会行動を遂行する上できわめて重要な役割を果たす。これら2つの特性は，互いに関連するものであり，社会性を成立させているメカニズムとその進化を考える上で非常に重要な事柄である。